●「その後のガールズ」は旧アドレスの方で、隠しページにアップしていたおまけの話でございます。
企画小説「TEMPEST GIRLS」の、その後のリスカと笹良です。

 
■■その後のガールズ(笹良×総司編)
 
 
 なぜかお兄様は、家の中に戻ったあと、笹良の部屋に陣取っていた。
 笹良は不思議に思いつつ、部屋に居座るお兄様を見返した。
 
「もう夜遊びなんてしないよ」
「どうだか」
「ホントだもん。もー抜け出したりしないから見張りいらない」
「なぜ俺がお前のようなガキを見張らなければ」
「くそっ、助けずにあのまま昇天させておけばよかった」
「何?」
「べっつにぃ」
「生意気な……。お前、今の顔、どうしようもないほど不細工だったぞ。まあもともとがソレだしな。仮にパーティへ行っても相手にはされないよな」
「人間は顔じゃないもん」
「へえそうか。俺だったら『性格のいい不細工と、性格のいい美人』どちらを選ぶと言われた場合、迷うことなく美人を選ぶね」
「普通、『性格のいい不細工と、性格の悪い美人』で比較しない?」
「馬鹿だな、性格の良さは同じ、という条件で比較した方が理解しやすいだろうが」
「そういうひねくれた意地の悪い考えが、悪魔だ」
「馬・鹿」
「き、嫌いだ」
「へえ、さっきは逆の言葉を聞いた気がするけれどね」
「なっ、なっ、馬っ鹿じゃないの!? 幻聴じゃない?」
「『オニイチャン、好キ』」
「ぎゃー!! 変態っケダモノっクリーチャー!」
「……笹良、こっち来い」
「いやだ、離せ離せっ」
「何て口の悪いガキだ。顔も頭も悪いが」
「人間は顔じゃない、それに笹良、頭悪くないっ」
「鏡を見ろ、そして思う存分泣け」
「可愛いって言われたもん」
「はっ、世辞だな。よかったな、パーティへ行っていたら間違いなく壁の花だな」
「ううっもうそんなとこ、行かないもん。笹良はこれから、寝癖のある髪の毛ぼさぼさな人を好きになるんだ!」
「はあ? 寝癖?」
「そうだっ。ちょっとコスプレ的で、変な髪の色してて、でもすっごく優しくて、見た目はかなりひ弱で頼りなさそーだけど意外に冷静で癒し系なお兄さんを好きになるんだあ!」
「何だその異様に具体的な例は」
「そして絶対笹良を馬鹿にしなくて、可愛いって言ってくれて」
「……笹良、ちょっと来い」
「ぎゃっ、何さ、離せ」
「誰だ、そいつは」
「何さっ」
「どこのどいつだ」
「う?」
「どこの男に手を出された?……いい度胸しているな、野郎(ボソッと)」
「え、え? どこって……どこだっけ? 単なる、理想像?」
「嘘をつけ! お前、美形好きだっただろうが。その男か、そのくだらない不細工な男のせいで趣旨替えしたのか?」
「くだらなくない! そんなに不細工じゃないもん、そりゃ美形でもないけど、馬鹿にするな」
「お前……!!――連れてこい、その馬鹿男!! 虎の檻にぶちこんで生きたまま臓腑抉って地中海の底に沈めてやる!」
「何言ってるの、ただの理想像だってば」
「笹良、嘘をつくな。今のリアルな具体例は、その男のことなんだろうが!……(ボソッと)『Randia』にはそういう容姿の男はいないという報告だったのに……学校か? それとも街中でナンパされたのか?」
「総司、人格変わってるよ」
「お前、お前が、そんな格好で出歩くから……スカートは今後膝丈にしろ、反論は却下だ!」
「いいもん」
「な、何?」
「こーゆう格好、好きっぽくなかったし、もういいもん膝丈で」
「笹良……!!」
「誰かさんみたく意地悪じゃないし(あれ? 誰のことを言ってるんだろ…?)」
「!!」
「それに……それに……魔法、使えて。あれ?……??」
「魔法?」
「うん……。あ、あれ?」
「何だ、夢か? 漫画の話か?」
「ううう? そうなのかな?」
「笹良」
「な、何さ?」
「(馬鹿野郎、驚かせやがって……)明日、出かけるぞ」
「そう。いってらっしゃい」
「馬鹿、お前も来い」
「何でさ!」
「ディオールのペンダント、欲しいんだろ」
「えっ、買ってくれるの! 何で? 高いよあれ」
「お前の欲しがってたものは、せいぜい一、二万だ」
「でも笹良、今、そんなにお小遣いないし」
「いいから」
「んむ?」
「明日はスカート、許す」
「?」
 
 
 お兄様は、苦悩の末、ぽんぽんと笹良の頭を撫でた。




■■その後のガールズ(リスカ×セフォー編)
 

 ここに、酒ではなく、果実を搾った飲み物で夜を過ごす者が二人。
 
「いいのですよ」
「はい?」
「私に付き合わずとも」
「?」
「あなたは、酒を飲んでもかまいません」
「いえ、いいのです、これで」
「飲みたかったのでしょう?」
「ええ、でも、飲んできましたし」
「飲んで?」
「うむむ? あ、いえ、何だか、そんな気がして……私、変ですね? 夢の中で飲んだのかな」
「リスカさん」
「おかしいな。何やらえらく美形の男性の夢を見た気が。しかも、なぜか体の中に酒の気配が」
「美形?」
「む?」
「美形の、男?」
「ええと、何やら、そう、ジャヴを連想させるような、容姿の整った人で」
「リスカ」
「うむっ!? セセセセセフォー!?」
「リスカさん」
「あああの、セフォー、夢の話です、きっと!」
「夢」
「ええ、はいっ」
「美形が、好きですか」
「ひっ。い、いいえ! 決してそんなことはっ。どちらかといえば、こう、可愛らしい破天荒な子が」
「破天荒?」
「ええ、その、反応が面白くて、よく泣いてですね」
「泣く?」
「口の悪さはなかなかなのですが、意外に素直で……あれ?」
「リスカ」
「うひぇえ!? あああ、あの、はい、夢です夢!!」
「夢」
「ええ、夢ですよ、セフォーっ」
「……あなたは子供好きだから」
「え?」
「いえ」
「あ、はあ……、そ、そうです、セフォー、乾杯しましょう!」
「……」
「美味しい飲み物ですね!」
「リスカさん」
「あ、ところで、セフォー」
「はい」
「セフォーは、リアだけではなく、異国へ行ったことがありますか?」
「ええ」
「そうですか……」
「それが何か」
「ちょっと変なことをお訊ねしますけれど」
「何か」
「異国の衣服って、何といいますか、凄いのですか」
「凄いとは」
「凄まじいほど露出度が高いというのが当たり前なのですか? 町民の方々も普段から、こう、踊り子のような何とも目映い……ではなく! いやはや、刺激的な格好と申しますか」
「露出」
「うーむ、凄かったな。目のやり場に困ると言いますか、華やかと言いますか。うむ、開放的な」
「華やか」
「ひ」
「リスカ」
「ははははい」
「そういった格好が好きですか」
「は」
「分かりました」
「?」
「露出ですね」
「……はい?」
「私、脱ぎましょうか」
「セフォー? なっ、なっ、なっ、何を……!」
「脱ぎます」
「――ひいいいい! セフォー、おおおお待ちくださーいっ!!」
 
 何かが間違っている二人の一幕。





※酒を飲む約束をしていた若者は一体どうなったのかといいますと。
「急用ができてしまいそちらへ行けなくなりました…〜」といった内容の手紙をリスカはしたため、小鳥に頼んで若者の所まで届けてもらいました。


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