F35

 お昼前に到着したラヴァンは、青い町だった。
 私の目に、ラヴァンはとても幻想的な町として映った。
 
●●●●●
 
「不思議……」
 樹木の形をした岩石は、中央へ接近するほど密集していた。外層部の岩石は灰色の部分が多く含まれ石の目も少し荒い感じだったのだけれど、この辺りのものはどれも丹念に磨いたかのように表面が滑らかで、青みを帯びた白っぽい色に変わっていた。奇麗だと思う反面、ちょっと恐竜の骨みたいだなと思ってしまった。サルィドの影響をより強く受けているため石肌が美しいのだとリュイが教えてくれる。ちなみに、これら岩石には「聖石」を意味する<リグド>という名があるらしい。
 エルに少しの間止まってもらい、手を伸ばしてリグドの表面を撫でた。サルィドの守護を受ける地。けれど、今、風は絶えている。曖昧な不安がじわじわと押し寄せてきて、誤摩化せないほど胸の中を占めていくのが分かった。神聖であるはずの町に風が吹かないその意味――風と大気を司るシルヴァイが神々の戒律に違反して、罰されてしまったためなんじゃないだろうか。
 リュイの視線に促され、ふっと息を落としたあと、エルに合図を送り再び移動を始めた。何だか、荒野とはまた違った意味で、寂しさの漂う場所だと思った。神聖な所って、寂しいのかもしれない。静寂という言葉がよく似合うんだ。音もなく雪が降る時の、密やかな切なさを連想する。
「見えてきました。ラヴァンです」
 リュイがぽつりと呟き、前方を指差した。
 私はもう一度、口の中で、不思議、と独白した。
 神殿を抱く町だから、一帯をぐるりと囲む幅の厚い丈夫な石門など、何らかの防塞があるんじゃないかと思ったんだけれど、まさかこのリグドと呼ばれる石の木を並列させて石壁の代用にしているとは想像しなかった。町を包む広域の密海地帯自体が既に一つの要塞みたいなものだと考えていたためだ。近づいて確認すると、張り巡らされたリグドの外門は、一部が透かし彫りになっている複雑な壁のように見えた。並ぶリグドの枝は絡み合い、幹の横に生まれる空間部分には通り抜けを防止するように頑丈な薄い色のブロックが詰め込まれていた。大小様々なブロックの接合面は不規則で少しでこぼこしており、よく見るときらきらした石の欠片を含んだ接着剤らしきものが利用されているようだった。リュイに聞くと、このブロックもまたリグドの欠片で、風の作用で自然に崩れて密海地に落下していたものを使用しているらしい。更にはこの煌めきを持つセメントみたいなものも、細工職人がリグドの欠片を潰して粉末にし、粘着性のある樹液を混ぜ糊状に練り上げて接合剤に変えたのだという。
 絡み合う枝の隙間部分は、ブロックを重ねた下部とは異なり、わざと埋めずにそのまま残しているようだ。この部分が細かな透かし彫りのように映る。なぜそうしたのか、エルの背上で腰を上げ、覗いてみて理解した。
 隙間から青色が差し込むためだ。リグドが持つ白色とたくさんの小さな隙間から覗く青色の対比は、多分陽光の下で見たら、とても奇麗だったんじゃないかと思う。この外門は、防衛の役割だけでなく、外観をも重視しているんだ。
「こちらが入り口です」
 視線を向けると、リュイが少し離れた場所に立って、手招きしていた。そちらへ近づき、また外門をじっくりと見上げる。町の入り口は、ぽっかりと大きく開いていた。以前は扉が設置されていたのか、それとも開放されていたのか、判断できなかった。
 隙間から見えた青色の正体は、建設物の外装だった。どれも、青い外壁を持っていたんだ。
「ねえリュイ、お店によって、持てる色が決まっているんじゃなかったっけ?」
 町の中にエルを進ませながら、疑問に思ったことをリュイに聞いてみた。少し前を歩くリュイが振り向き、軽く頷いた。
「はい。しかし、神殿を持つ町は例外とされるのです。神殿の特色を町全体で守るために」
 そう説明しつつリュイは、近くの建物の一つを指差した。
「よく見てください。建築物の外観は青ですが、看板の色は違うでしょう。その色で、何を扱う店なのか人々は判断します」
 へえ、と感心した。町全体で神殿が持つ色を守るというのはすごいかも。それだけこの世界では信仰が重んじられているという証にもなるだろう。逆の視点でいえば、実際に恩恵がもたらされているため信仰もよりあつくなるってことなんじゃないかな。
 正門から内部へ続く中央道の両脇には、一抱え以上ありそうな太さの柱が等間隔にずらりと並んでいた。そのどっしりとした柱の間には、花でも飾っていたのか、花壇らしき用具の跡が見られた。
 やっぱり神殿があるだけに、町の造りがしっかりしているようだ。
「全体構造として、町の外層部分……今、私達が歩いている場所は、遠方からの客人を迎える店が多く連なっています。最も賑やかな通りで、数も多いのです」
 そっか。旅人の立場だと、分かりやすい場所に宿やお店が集まっていた方が親切だもんね。日本でも、人が多く行き交う場所、たとえば駅付近は栄えているし。
「中層部には、商人達の別宅や町民の住居があり、田畑も見られるはずです。そして最も奥まった区画に下位神官達が暮らす総合館、神殿関係の各施設などがあります」
 肝心の神殿はどこなんだろう?
「神殿はそれら施設の後方に造られているはずです。神殿の裏側には森林が広がっている」
 感心して頷いた時、リュイがふと、斜め前方に見える妙に細長い石造りの建物へ顔を向けた。
「あの建物は何?」
 他の建築物と比べて、棒みたいにひょろりと縦長なんだ。屋上部分には柵がある。なぜかこの建物は、外壁の一部分だけしか青くない。中間あたりに、青い線が塗られているだけだ。
 リュイは、護舎だと言った。派出所みたいなものらしい。どうして一部分だけしか青くないのかと訊ねたら、リュイはちょっと口ごもり、言葉を濁すような感じでぽつぽつと教えてくれた。ラヴァン出身以外の兵もいるためというその慎重な説明を聞き、言葉にされなかった謎の部分を私なりに解釈してみる。どうも、管轄だけの問題じゃないみたい。日本だって普段の生活では意識しないとはいうものの、宗教というか……思想と表現する方が正しいのかな、そういうものと政治は案外密接な関わりを持つ面もあるらしいけれど、全部を同列に扱うことはできない。リュイが言葉を選んだのって、多分騎士だからだろう。この世界の騎士は、無理矢理日本的に言えば、いわゆる警察関係の人なわけで。ラヴァン出身の役人は、大抵風の信仰心があるだろうけれど、別地区からここに派遣された兵の人は、違う何かを崇めているかもしれない。そういうこみいった理由で、明瞭に建物全部を青くすることができないんじゃないだろうか。
「警備兵達が利用する護舎は、町の各場所に点在しています」
 うんうんと一人で納得する私を見つめ、何だか戸惑った顔をしつつもリュイが言い添えた。どこの世界も勤め人って大変だよね、と私は内心で大人の顔を作り知ったかぶりをした。
 縦長の護舎から視線を逸らし、町の図を頭の中で想像する。建築物などが多く建ち並び人が行き交う主要部分は、道も複数に枝分かれして、放射状になっているようだ。神殿がある部分を基点として、外側へ向かって扇を開いた感じに造られているということらしい。
「リュイはここに来たことがあるの?」
「ええ、幼少時に。一度だけで、滞在期間も短く、記憶は曖昧ですが。あなたよりもまだ幼い時でした。父とともに……」
 と、よどみなく答えていたリュイがはっとし、言葉を途中でとめた。
 私よりも幼い時、って。
 どういう比較なのかな。その表現、なんかごく自然に使われただけに、恨めしい思いが生まれるんだけれど。
 つい眉間に皺を寄せて軽く睨むと、リュイが恐る恐るといった感じでちらりとこっちに視線を向けた。
「……」
「……すみません」
 リュイは時々、墓穴を掘っていると思うな。
 気を取り直して、私は別の質問をすることにした。
「魔物とか、出てくるかな」
 日中でも飢えた魔物や獣が出現するらしいので、万が一に備えて警戒を忘れちゃいけないと思う。でもリュイは、いつもより余裕がある気がするんだ。
「神殿自体が守護の役割を果たしますから、まだその効力が生きていれば、他の町よりは魔物の危険は少ないはずです」
 じゃあ、神殿に隠れて暮らしていた方が安全……と考えて、血の気が引く中、思い出した。たとえ魔物の出現が少なくても、夜になるとたくさんのレイムが現れるんだった。
 ウルスでの出来事が一気に脳裏に蘇り、顔が強張った。忘れられない一夜のこと。黒い道。屍の山。
 リュイは敏感に何かを察したのか、慰めるように普段よりも柔らかい声音で言った。
「守りますから」
 いけない、動揺をあらわにすると、きっとリュイまでも追いつめる。
 泣き叫びたくなるような苦しい感情を胸の奥に封じ、にこりと笑いかけてみた。ここで立ち止まっても、過去は戻らない。
「ねえリュイ」
「はい」
「敬語」
 一瞬目を見開き、リュイは何気なく誤摩化そうという素振りを見せた。駄目だよ。
「これが普通なのです」
 と、暗に諦めてほしいと訴えられたけれど、嘘だと思う。最初会った時は、敬語じゃなかったもの。
 ここで負けると、絶対他のこともあやふやにされるに違いない。剣の稽古とかも先延ばしされて、教えてくれないつもりなんだ。
「私の住んでいたところには、究極の選択っていうのがあってね」
 濃厚な警戒を漂わせつつもリュイは視線をこっちに戻した。
「どっちか絶対に選ばなきゃいけないの。敬語、やめる? 剣、教えてくれる?」
「……」
 私を乗せていたエルが、不自然にぐふっと鼻を鳴らした。もしかして、今笑われたような気がする。
「あとね、じゃんけん、っていうのがあって。それで決める?」
 リュイの顔がだんだん引きつってきた。何を隠そう、私はじゃんけんの王者なんだ。
「まさかリュイが約束破るとは勿論全然思っていないけれど、もし、そうだったら、私傷つくかも」
「そんなつもりは。……ですが」
 リュイ、今よろめきそうな顔をしたよ。
 こんな話をしながら、私達は神殿に向かった。
 敬語はもう諦めてもいいけれど、稽古だけは絶対つけてもらうんだ、と誓いつつ。
 
●●●●●
 
 とりあえず、神殿に向かう途中、目についたお店に入って必要な物を入手しておいた。
 リュイは時間の経過を気にしながら、素早く商品を見定めて、使えそうな物を分けた。ウルスの時と同じ過ちをしたくなかったので、私も余計な真似はせず大人しく協力し、持ち運べる物を選り分ける。エルはその間、危険が近くにないか、見張り番。
 お酒の入った瓶を矯めつ眇めつしながら、本当にこれでいいんだろうかと意識を別のところにさまよわせた。ウルスでは、私は何もできないどころか最悪の事態を招いてしまった。実力不足という表現では許されない罪。だからといって、これから救う予定の王子様達に責任を預けて全部まかせるという判断は、正しいんだろうか。それに、その王子様達もレイムに変貌しているだろう。一体、どうやってたくさんのレイムの中から王子様を探せばいいのか――私はまた失敗しないだろうか。人に戻すには、レイムを斬らなきゃいけないんだ。
 こういうことをリュイに相談してもいいのか、それさえも決められなかった。情けなさ過ぎて、とても言えない。お店を出たあとも、エルの背にまたがり周囲の景色を目に映しながら、一つ一つ悩み事を掘り起こして積み上げる。こんなに数多く悩むことがあるのに、解決策はゼロだ。胸の中に鬱積している様々な問題は、単純なことなんだろうか、それとも難解なものなんだろうか。答えが見当たらないのは、悩みの本質に難しい要素があるんじゃなくて、それを考える私が仮説や不安などの余分なものをくっつけてしまっているせいなんだろうか。
 たとえば、今自分の手首にはまっている腕輪を守るという話なら、とても簡単なことだ。奇麗に磨き、手入れして、金庫に入れておけばいい。傷がつかないように、落としたり壊したりしないように注意するだけ。けれど、守る対象が物じゃなくて、生きて動く人間なら。それはとても難しいように思える。人を金庫の中に預けることはできない。予想外のハプニングというのが起きる可能性が高いんだ。だとすると、難しいのは問題じゃなくて、不確定要素の部分をどう解決するかということなんだろうか。私がやるべきことは、レイムになった人々を無事に戻すこと。この場合の不確定要素は、私自身の能力……無力さがどんな現象を引き起こすかということなんだ。
 ああ、頭の中が悩みでパンクしそう。
「――あれが神殿です」
 リュイの声に、私は我に返った。
 いつの間にか、乾いた道は石畳に変わっていて、田畑が見えていた辺りとは違い、すっきりと整備されていた。
 町の入り口よりも規模は小さいけれど、整えられた道の両脇に幾何学的な図が刻まれた細い柱が立っている。先端が蓮弁状に削られている柱で、どうやら以前はその部分に火を灯していたらしい。周囲にはそれぞれ区画が設けられ、石垣の奥に神殿関係の施設らしき建物が見えた。区画の境目にも、街灯みたいなその細い柱が並んでいる。
 道の奥にひっそりと存在する神殿を眺め、私は驚いた。一番奇麗な青。色鮮やかってわけじゃなくて、少し薄い青だ。全体は、外国に存在する礼拝堂みたいな造りだった。正面の高い位置に、装飾された透明な細い棒がたくさん下げられているのに気づく。きらきらとしたビーズカーテンを不意に思い出した。多分それは、風が吹けばぶつかりあって、奇麗な音を立てるんだろうと思われた。
 観音開きとなっている正面扉は、獣か何かが衝突でもしたのか、片側が破壊されていた。優美な造りの神殿であるだけに、壊れた扉が悲しく思えた。
「入りましょう」
 リュイが正面扉の横に放置されていたランプのような容器を手に取って、その下側に設置されていたらしい螺子のような部分を捻った。ランプの中に明かりが灯る。どういう仕掛けなのかなと不思議に思ったけれど、その質問は今、重要なものじゃないので堪えた。
 とにかく、明かりが必要だということは、神殿内部は日中でも薄暗いんだろう。
 私はエルの背から降りて、荷物と一緒にくくっている剣に手を伸ばした。剣を抱えるより早く、リュイが制止の声をかけてくる。
「お持ちにならなくともよい」
「でも」
「この時間、レイムはいません」
 でも、危険な獣とか。
 普通の獣には効果がなくても、魔物は斬れる。
「私がおりますから」
 リュイは認めてくれなかった。なんだかすごく、泣きたくなる。
「……うん」
 私は頷いた。我が儘を言って、時間を無駄に浪費してはいけない。「でも」という反論の言葉が、心の中で暴れている。
 エルに騎乗してほしいという目をリュイは向けてきたけれど、せめて歩きたかった。あまり何でも否定して反発されては困ると考えたのか、歩くことに関しては認めてくれた。
 リュイはランプを掲げ、もう一方の腕で私を庇うように背に触れながら、慎重な眼差しを神殿内部に向け、進んだ。入り口付近に散乱している砂や破壊された扉の欠片を踏んだためか、じゃりっと小さな音が聞こえた。
 高い位置に窓が設けられていたけれど、やはりここも、前に無断で入ったお店同様、硝子部分が埃で汚れていた。それに、普通の窓じゃなくてステンドガラスだったから、余計神殿内は薄暗かった。多分、普段でも明かりをつけていなければ暗かったんじゃないだろうか。
 扉のすぐ側、両脇に大型の燭台がある。勿論今は、火が灯っていない。
 柱にも壁にも、花か蔦みたいな図が描き込まれていた。様式とかは分からないけれど、本当に外国で見るような奇麗な神殿だったのだろうと思う。
 でも、私の意識は、すぐ別の場所に移った。
 まずホールみたいな所に入ったんだけれど、目に映ったものを見て、ぎょっとした。彫像を置いていたらしき台座が二つある。けれども、その上に乗せられていたはずの彫像本体は、見事というくらいに粉砕されていた。元の形が見当つかないほどに。
 台座の周囲には、破壊された彫像の残骸が散らばっている。一体誰が、ここまで執拗に彫像を破壊したんだろう。どう見ても、自然に壊れたんじゃなく作為的だ。
「奥へ行きましょう」
 リュイに促され、私は無理矢理視線を彫像から引きはがした。エルもじっと彫像の残骸を見つめていたらしく、すごく悲しげにきゅんと鳴いたあと、私の腕にすり寄った。どうしたんだろう、エル。
 ホールに当たる場所の正面にまた扉があった。ランプのわずかな明かりの中、目を凝らして窺う。中もやっぱり礼拝堂に似ていた。四方の壁の上部にずらりと設けられたステンドガラス。塵芥に覆われているものの、少しは外の明かりを内部にもたらしていた。
 人々を迎え入れるためのベンチが中央通路を挟んで両脇に何列にも設置されている。オルガンみたいなものもあった。
 突き当たりとなっている奥の部分の壁は緩い半円を描いている。一際大きな円型のステンドガラスが天井近くに設けられていて、そのすぐ下の壁は縦長に幾つもへこんでいた。そこにも恐らく彫像が飾られていたんじゃないだろうか。その証拠に、やはり粉々にされた石塊の残骸が床に積もっている。
 私達はゆっくりと突き当たりへ近づいた。そのすぐ手前に壇があり、たくさんの蝋燭立てが並んでいた。そして、石段の上にも、彫像を乗せていたらしき台座が――。
「リュイ……、ここで、何があったんだろう?」
 私は疑問を抑え切れなくなった。明らかに不自然だ。一つとして無事な彫像がない。仮に、国を覆う厄災が原因で暴動が起きたのだとしても、全部破壊されているなんておかしいよ。
「どうして彫像ばかり念入りに壊されているの?」
 私は言葉を発すると同時に、台座へと駆け寄った。日本だと、台座の部分に説明を記したプレートが取り付けられている銅像とかがよくあるから、ここにもないかなと期待したんだ。もしプレートがあれば、一体何の像があったのか判断できる。
「響――」
 残念ながらプレートの類いはなく、落胆しつつ振り向いた。こちらへ近づいてきたリュイが、手に持っていたランプを空の台座の上に置いた。ランプの明かりに、強張ったリュイの姿が浮かぶ。
「あなたに、言わねばならないことが」
 改まった言い方に、不吉なものを覚えた。何だろう、胸騒ぎがする。
「あなたは、神の眷属、風の神の眷属であると」
 リュイの声がとても深刻で、私はすぐに答えられなかった。
「風の神の名を、シルヴァイと言いましたね」
 どうして今、名前を確認するの?
 私達は少しの間、見つめあった。唐突にエルが私の腕に顔を押し付けてくる。
 リュイが覚悟を決めたような顔で、口を開いた。
「しかし、シルヴァイという名の神は、エヴリールに存在しないのです」
 え――?

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