F2:04
その部屋に入り、内部を目にした時、なんだかくらりとした。
すごい。
呆気に取られてしまう光景だ。極彩色の曼荼羅めいた図が床に大きく描かれている。床だけじゃなく四方の壁にも大小様々な曼荼羅っぽい図が無数に描かれていた。そして天井部分にも装飾がある。
鮮やかな色彩の渦に目を奪われたあと、我に返る間もなく、今度はまるで天地が逆になっている部屋に迷い込んだかのような錯覚を抱いてしまう。
高い天井こそが床であるかのように、儀式の最中といった感じのポーズを取る貴人の石像がいくつも逆さまに作られていたんだ。聖書に似た分厚い本を広げている老人の像があったり、ローブみたいな長い服の裾を大きく広げて膝をつき祈りを捧げる女性の像があったりね。どの像も、本物の人間と同じサイズじゃないだろうか。
ちゃんと祭壇や調度品の彫刻までもがあって、細かなところまでとてもリアルに作られている。変な表現だけれど、あんまり本物っぽい造りのために何だか自分の身が天井へ向かって落下しそうな感覚に襲われてしまう。
天井をいつまでも眺めていると、本当に頭がぐらぐらし、平衡感覚が大きく乱れそうな気がしたので、慌てて視線を床の曼荼羅へと移した。
大きく描かれた曼荼羅の中央に、刀掛台のような造りをした背の高い真紅の剣置きがあった。下部分は魔術使用時に描くような、精密な陣の透かし彫りが施されており、とても優美だ。
色彩渦巻く異様な内装の様子に気圧され立ち尽くしている皆の間を縫って、私はその置き台に近づいた。長い剣が一本、上部分に置かれている。
その剣は柄の端まで錆びきっていた。一見する限りではとても使い物にならないような古い剣だけれど、言葉ではきちんと説明しがたい圧力のようなものを感じる。きっとこの剣はまだ、生きているに違いない。
「神剣だ」
とバノツェリが一言、告げた。
私はその剣を見つめながら、柄に手を伸ばした。
「待て! 封印の術が――」
バノツェリの慌てる声が耳に届くよりも早く、私は剣の柄を掴んでしまっていた。皆が息を呑む気配を感じた。
「あ、意外に軽いかも」
予想より重量がない気がする、と私は呑気に感心した。
剣先を下に向けて握り具合を確かめた瞬間、ソルトの力を借りた時と同様に、錆がまるで鱗のごとく剥がれ落ちた。うん、やっぱりまだちゃんと生きている。
「大丈夫みたい、使えるよ」
封印の術って何だろ、と蘇った剣を矯めつ眇めつして見ながら遅れて考えた。
「とんでもない娘だ」
イルファイが目を剥いたままぽつりとこぼした。もしかして、勝手に触ったらいけなかったとか。後ろめたさを感じつつ皆に顔を向けると、全員が同時に大きく溜息を落とした。
「えっと、封印って?」
「……もういい。お前が触れた瞬間に術がほどけたようだ」
イルファイが肩を落とし、疲れた様子でひらひらと手を振った。
「娘、真に神力を宿しているのだな」
バノツェリがなんともいえない複雑な表情を浮かべてそう言った。
「許可を得ていない者が触れれば、剣を守護する術に身を焼かれる」
お願い、それを早く言って。
そもそもは説明されるより早く、勝手に剣を取ってしまった自分が原因なんだけれど、それを棚に上げ胸中でバノツェリに訴えてしまった。よかった、身を焼かれなくて。神様たちがくれた力のおかげだと思う。
私は両手で水平に剣を持ち、状態を調べた。とても奇麗な剣だ。暗い青色の柄部分には唐草のような模様が入っていて、小さな宝石も埋め込まれている。鍔部分も水の流れを思わせるような美しい彫りが施されていた。試しに少し鞘から抜いてみると、刀身は水晶のように透き通っていた。ソルトも赤い水晶みたいに透明な刀身だ。こっちは無色で透明らしい。奇麗だなあ。
ほうっと感嘆した時、はっきりとではないものの胸にソルトの不満げな声が響いた。あれ、なんだかソルト、不機嫌っぽい。
どうしたの、と心の声で訊ねたら、そんな不細工剣をいつまでも手にするな、と苦々しい声で怒られてしまった。
不細工剣って……、これも神剣なんだからソルトの仲間みたいなものでしょう。
そうたずねると一層不機嫌な声で、我を他の駄剣と一緒にするな、と激しく叱責されてしまった。
私達の密かなやりとりが分かったのか、エルが突然ぐふっと鼻を鳴らし、尻尾をくるんと丸めた。もしかしてエル、笑ってない?
あー分かった! ソルトってばきっと私が他の剣を褒めたから焼きもちを!
と内心で得意になって叫んだ瞬間、ものすごい勢いで暴言を吐かれてしまった。
照れ隠しかなー八つ当たりかなーと調子に乗って思わず軽口を叩いてしまう。言葉にならないらしいソルトの罵声が胸の中で渦をまいた。
もーソルトってば可愛いところがあるなあ、うん。
私は上機嫌になり、よしよし、と腰に差しているソルトをこっそりと撫でた。うわぁすごい、ソルトってば呪詛みたいな勢いで暴言をまき散らしているよ。
あんまりソルトの機嫌を悪くして、いざという時協力してくれなかったら困るので、私は神剣をバノツェリに渡すことにした。
ところが、王子に会うまでお前が持っていろ、と固辞されてしまう。ソルトが怒るから持てないとは説明できず、ちょっと困ってしまった。今のソルト、天敵に出会って逆毛を立てている猫状態で……とついたとえを出したのがまずかったみたい。怒りが限界を超えたという感じで、ぱたっとソルトが沈黙してしまった。ううん、これはとってもまずいかも。
少し焦りつつ、「じゃあイルファイに……」と思って彼へ顔を向けた。けれどイルファイまでも嫌がった。己自身で使えぬ荷物など持ちたくない、というすっごくいいかげんな理由でだ。クロラは怯えているし、他の人はというと、先程の「身を焼かれる」というバノツェリの説明がきいているのか、やはり大仰な態度で嫌がられてしまった。もう術はほどかれていると言っても、皆首を振って後退りする。ディルカレートは王家側が管理している神剣なんて興味ありませんっていう冷たい顔をして絶対にこっちへ寄り付こうとしない。
どうしよう、エル。
ソルトと険悪らしいエルにまで、知りませんって感じで尾を振られた。
いよいよ四面楚歌状態になった私はさっきとはうってかわって真剣にソルトへ謝罪した。ごめんね、悪ふざけしたこと本気で謝るから許して。
……どうしよう、返事返ってこない。そのくせものすごい怒りの気配だけはひしひしと感じる。
私は泣きっ面に蜂という現状に、項垂れた。
●●●●●
神剣を無事手に入れたあと、私達は砦組の人達が来るまで、他の装備を整えておくことにした。
ちなみに神剣は、拝み倒してエルの背にくくらせてもらった。
魔物の出現に警戒しつつ色々な部屋を確認する途中で、イルファイは魔術の書らしい演儀泡典を発見し、すごく嬉しそうな顔をした。更には古代の禁術を記しているという閲覧不可の禁断の書みたいな本もちゃっかり手に入れたらしい。バノツェリがどうしようもないほど渋い顔をして、喜ぶイルファイを眺めていたけれど、緊急時だから仕方ないって諦めたらしく、何も言わなかった。出現した獣や魔物に魔術を仕掛けて追い払うイルファイの姿が頭に浮かんだんじゃないかな。実際にイルファイは、魔術関係の本を置いていた部屋へ到着する直前に出くわした魔物を見事撃退したんだ。魔術ってすごい。詠唱するとイルファイの足元に金色の陣が浮かぶ。大きな術ほど、陣の模様が複雑になるみたいだった。
ただ呪文を唱えるだけで術が発動されるのなら私や他の人にもすぐ使えるんじゃないかなって思ったんだけれど、そう簡単ではないらしい。大師と目されるイルファイだからこそ、詠唱のみでも魔術を使えているんだって。本当は頭の中で、順序通りにはっきりと陣の記号を描いているんだとか。普通だったらちゃんと手で陣を描くか、専用の法具に予め術の基盤となる図を仕込んでおいて、使用時に詠唱するという方法を取るそうだ。そうか、頭の中で陣を描く、というのは簡単そうで意外と難しい。記憶って結構細部が曖昧になるし、きちんと覚えていたとしても写真みたく鮮明には頭の中で描けないものだ。何かを強く思い描いた時でもやっぱり雑念が混じるもんね。
とはいえ、魔術の道に精通しているイルファイであっても多数を相手にするような大掛かりな術の時は、法具を使わなければ無理らしい。
ちなみに魔法は、自分の中にある魔力をはかり、法則をもって練り上げ、言葉として放つのだとか。練り上げた魔力を言葉に乗せる、といえばいいのかな。ううん、基本はどっちも詠唱が必要のようだし、細かな違いがよく分からない。
イルファイに更なる質問をぶつけると、魔法に関する事情は率帝に聞いた方が早いと返されてしまった。魔術の呪文については、まずその式を自分で解読することから始めなければいけないため厄介なんだって。なるほどね、言ってみれば専門知識がなければ読めない古代文字みたいな感じなんだろう。でも、たくさん勉強して魔術書に記されている式を正しく読み解けばすぐ使えるってわけじゃない。なんと解読した式を使って自分で陣の配列などを探り当て、正確に作り替えなきゃ駄目なんだって。魔術を使いたがる人は結構いるらしいけれど、半端な知識では式を読み解けたとしても陣の図をきちんと構築することができないらしい。演儀泡典には、解読前の式がずらっと明記されているだけなんだそう。ちらっと見せてもらったら、難しそうな数式と異世界の古代文字と小さな図式がごちゃごちゃミックスされた感じの文章が記されていて、正直、ちんぷんかんぷんだった。数学や美術が苦手で記憶力がよくない私には、魔術の習得はどうも無理っぽい。人間、諦めも肝心だよね。
自分を無理矢理納得させたあと、他の人と共に武器や着替え、保存食、法具などを探す方へ回ることにした。運がいいのか、それとも主神殿にまだ加護がわずかでも残っているためなのか、たくさんの魔物と遭遇することはなかった。
もう一つ、なぜこの主神殿に色々と役立ちそうなアイテムが揃っているのかといえば、国の荒廃が加速した時、王家や身分の高い貴族達が最後の砦としてよく利用していたためらしい。
その後、王子達がいそうな場所をバノツェリと話し合ったり、結界をはるのに適した避難場所を決めたりした。
かなりの時間がすぎたと思う。
砦組の人たち、遅いな。
午後を大きく回っても、まだ砦組の人達は来ない。
全ての作業を終わらせた私達は、転移の間に戻って待機していた。きっとここに彼らは現れるはずなんだ。
けれどしばらく待っても、砦組の人達は戻ってこなかった。
ガレ国で使用されている懐中時計を発見したイルファイが、気難しげな顔で時間を確認した。私は横から時計を覗き込んだ。数字の書き方は違うけれど、異世界でもどうやら十二進法が使用されているらしい。よかった、私にも分かる計算法で。
時計の読み方に安心している場合じゃなかった。もう夕方が近い。
砦にさえ到着してしまえば、そこから転移の術を使えるため、そう時間はかからないはずだ。
だとすれば余程砦までの距離が長いか、あるいは使えそうな法具の類いを探すのに時間がかかっているのか――まさか、魔物などに襲われてこっちにこられない状態なのか。
「砦の場所ってそんなに遠いの」
悪い想像を打ち消したくてイルファイに訊ねると、どこか憂いを含んだ声で返された。
「いや、出発の基点となった神殿からであれば、徒歩でも三時間あれば行けるはずだ」
三時間。結構時間がかかるけれど、朝のうちに移動したことを考えればもうこちらに着いてもいいはずだった。
リュイや率帝、大丈夫なのかな。
何かあったんだろうか。
様子を見にいきたくても、私には砦のある場所が分からない。
「ここからだと、遠い?」
私の質問に、イルファイだけでなくバノツェリまでもが警戒の顔をした。
「無理だ。既に夕刻が迫っている。向こうへ到着するまでに夜が訪れるぞ。この神殿はまだ守護が残っているために魔物の出現が少ないようだが、外はそうもいくまいな」
「イルファイ殿の言う通りだ、娘よ。闇が満ちれば当然守護も薄くなり、魔物の数が増えるだろう」
「そう、それに、レイムも出現する」
二人掛かりでテンポよく責められ、たじたじになってしまった。更には、騎士数人にまで背後を固められてしまった気がする。なぜかクロラにまで切実な眼差しを向けられてしまったし。私が無茶を言って砦に行くんじゃないかと強く疑っているみたいだ。自分に前科がある分、言い訳できない。
「先程お前は魔術と魔法の違いについてたずねたな」
「う、うん」
イルファイが厳しい声で突然話題を変え、私の正面に立った。教師に説教される前の気分だよ。
「もっとも明らかな違いは、力の差だ」
「え?」
「炎を例にして分かりやすく教えてやろう。魔力によって生み出された一つの炎は、魔術にて作られた十の炎と同等の威力を持つ」
それって。
「そうだ、魔術よりも魔力によって作られる炎の方が強い。一と十、歴然とした差がある」
イルファイの深い目を長い間、凝視してしまった。マッチの火と松明の炎、そのくらいに違いがあるという意味なの?
「人でたとえた方が分かりやすいか。中程度の術式を修めた魔術師であっても、率使の力量と比較すれば見習い程度でしかない。ゆえに率使は、魔術師を軽んじる」
咄嗟にイルファイの手を掴んでしまった。きっと言いたくないことを語らせてしまったに違いない。
「とはいえ、私ほどの魔術師になれば、中位程度の率使が操る魔法など稚拙に感じるがな」
イルファイはさりげなく私の手から指を引き抜き、真面目な表情を崩してにやりと不敵に笑った。
「だからな、響。無論私は強いが、それにしたって万が一という事態もあろう。この時刻だ、そろそろ結界を構築して皆の安全を守らねばなるまい。お前が滴らせる神威は結界の硬度を上げる。今度こそは、大人しくせよ」
そうか、イルファイは私を出ていかせまいとして、本当は打ち明けたくなかったであろう魔法と魔術の力量差を教えてくれたんだろう。思い返せばイルファイが率帝と口論した時、わざと卑屈な表現を用いていた気がする。そして率帝はイルファイに、魔力の亡者、と手厳しく応酬したんだった。魔法と魔術、似ているようで違う。知らない者からすれば気にとめる必要のない些細な違いに思えても、彼らにとっては目を逸らせぬ大きな確執の種となるんだ。
ぎゅっと口をひき結ぶ私の耳に、イルファイは身を屈めて顔を近づけた。
「皆に動揺を見せるな。神力を持つお前が不安を見せれば、砦側に不幸が起きるのではないかと皆まで落ち着きをなくす」
囁き声による忠告に、はっとした。私は慌てて大きく頷いた。
「全く、お前は時折、ただの娘では、という奇妙な落差を見せてくれるものだな」
イルファイが背を起こし、興味深げな顔をして、私を見下ろした。
私は曖昧な微笑だけをなんとか返した。背筋に寒気が走ったのを誤摩化してだ。
素のままの自分では歓迎されないというソルトの警告が、やけに思い出され、胸にもたれた。
●●●●●
「遅い」
バノツェリが深刻な顔をして独白した。
「駄目だな、避難場所へ移動した方がいい」
イルファイもまた、結論を出した。
夕暮れの気配が忍び寄り、夜の加護を求める魔物たちの鳴き声が少しずつ聞こえ始めていた。それだけではない、いずれレイムも目覚め始めるだろう。
「この部屋に守護の結界を作ることはできない?」
転移ができる儀式の間にとどまり、結界を作って、砦組が戻るまで待つことは不可能なんだろうか。
「危険だな。この広間は入り口が大きく、魔物にもレイムにも見つけやすい場所にある。この場にいる者が皆、戦えるとは限らない」
イルファイは最後の言葉だけ他の人に聞こえないような小さな声で言った。
「でも、結界をはれば、魔物たちが現れても大丈夫なんじゃないの」
イルファイは一度視線をさまよわせたあと、私の腕を取って皆から少し離れた場所に移動した。皆には聞かせたくない話をするんだろうと思った。
「では想像してみるがいい。広間を隙間なく埋め尽くすほどの魔物、レイムが結界に押し寄せた場合、どうなるかを。夜明けが来るまで、外側から幾度も結界に衝撃を与えられることになる。王都には魔術師や率使が召喚した魔が溢れていると説明したな。これまでは運良く遭遇しなかったが、召喚魔の中には狡猾なものとている。いや、神力を持つお前がいれば、結界の硬度は保たれるだろう。けれどもだ、人の心も平静を保てるだろうか。魔に慣れている私やお前、騎士は耐え抜けるだろう。だが、他の者は? 結界に群がって我らを食らおうとするレイムや魔の姿を間近に眺めながら、平常心をいつまで保てるだろうか」
イルファイは鋭い視線を、クロラやその他の人に向けた。神殿組に入ったのは、戦いを知る騎士ばかりじゃなく見習い神官という立場の人もいるんだった。
私はそう遠くはない過去の自分を思い出した。ウルスで、レイムに囲まれた時のことだ。平常心をなくし、混乱した自分。とても卑怯な考えを抱き、リュイを傷つけた。冷静でなんていられなかった。
「平常心を失った者の行動は読めない。思いもがけない真似をして、皆を危険に巻き込む可能性がある。それだけは避けねばならない。ゆえに、彼らがこの状況を真剣に理解し慣れるまでは、なるべく魔物やレイムに見つかりにくい場所で避難せねば」
私は頷いた。イルファイの説明はもっともに思えた。
「じゃあ、私達が移動したあとに砦組が戻ってきたら、どうしよう」
「柱に文をつけておく。避難場所で待っていると書いておけばいい」
「うん」
どうして砦組はこんな時間になっても戻ってこないのか、その答えが一番知りたいのに聞けない。
「神の娘とは、いささか厄介なものだな」
俯く私の頭上に、イルファイの困惑した声が降ってきた。
「皆への慈しみ。それは癒しであり、時に諸刃であるのか。聖典に曰く、神の愛は広く深いと。信じてはいなかったが、お前を見ると迷う。確かに、広く深いのかもしれない。全てを持つ神は、その深さ、広さゆえに、己の滅びを悟っても救いに走るのかと」
「……え?」
広さは滅びに至る――そういう言葉を、以前に聞いたことがあるような気がした。
確か、フォーチュンの言葉じゃなかっただろうか。でも彼が言っていたのは、人が持つ欲望の広さについてではなかったか。慈しみも、広すぎると駄目ってことなの?
「無限の広さは、無限の虚無か」
私は瞬いた。どういう意味だろう。
それは、私の心が、実は空っぽって意味なんだろうか。
後先考えずに無茶な行動をするから? 浅はかだって、そう言われているのかな。
「さて、移動しよう」
イルファイが夢から覚めたようにきっぱりとした声でいい、混乱する私の背を軽く叩いた。
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