she&sea 11

 グランの身は、ちゃんとサイシャの所へ預けられたみたいだった。
 すっごくすっごく容態とか気になるけれど、様子を見に行きたいって一言がどうしてもガルシアに言えなかった。不用意な発言をして、独裁政権のトップに立つガルシアの機嫌を損ねてしまったら、また取り返しのつかない凄惨な事態を招いてしまうかもしれない。ガルシアはいつも笑みを浮かべているので、とても本心が掴みにくいのだ。ある意味、無表情を作るよりも笑顔の方がずっと本音を包み隠せるものなのかもしれない。
 そういうわけで、どんな言葉がガルシアの逆鱗に触れる恐れがあるのか、まだまだ見極めがつかず、大いに困惑してしまう。態度は穏やかなままだから大丈夫かなあと安心した次の瞬間に、ガルシアは感情の窺えぬ笑顔でとんでもなく非情な命令を下してしまうに違いない。
 
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 神様が不在だった悲劇の夜から、更に三日が経過していた。笹良がこの世界に強制連行されて、およそ一週間が過ぎたのだ。
 その間、もう数えきれないくらい、死神ロンちゃんと会いたいって切実に思った。異世界で一番話の通じるまともな奴が人間の魂を収集する人外の死神だったというこの現実、もしかして神様のブラックジョークなのかと悩まずにはいられないが。
 ああどんな世界であっても一番不可思議で邪悪な存在は人間なんだってしみじみ納得してしまう。全世界で共通する不変のルールってやつなのか。
 死神、笹良はすごく会いたいのに。
 でも、人前では呼べない。見せ物みたいな真似はさせたくないし、自分の不安を取り除くためだけに呼ぶのはロンちゃんの信頼を裏切るような行為に思える。
 名前を教えてくれたってことはさ、少しは笹良に好意を持ってくれたんじゃないかって、勝手に都合良く思っているんだけれど。嫌いな奴には、名前、呼ばれたくないと思うし。確か昔々の日本でも、名乗るということに、すごく意味を見出していたんだったよなあ。いや、これは学校の授業とか教科書で得た知識じゃなく、とある漫画にそんな設定があったんだけれど。
 夜、一人になったあとでロンちゃんを呼ぼうかともちょっと考えたけれど、笹良にあてがわれた寝室ってガルシアの部屋と続いている……っていうか、もともとここもヤツのテリトリー内なわけだしさ、しかも野性の肉食動物並みに勘が良さそうだから、ロンちゃんが現れた時、普通じゃない気配を感知して、無遠慮にずかずかと乗り込んでくるかもしれないし。
 日中は日中で、一人になれる時間、皆無といってよし、なのだ。
 笹良、うんざりするくらいガルシアの側にいる。
 そのガルシアに仕事があって、どうしても一緒にいられない時は、お目付役兼ボディーガード君が笹良の側にいるわけで。
 笹良の護衛役って本当はグランだったけれど、彼は今深い傷を負っている身なのだからしばらく安静にしていなければならない。
 で、動ける状態じゃないグランの代わりとして、誰が笹良の護衛になるようガルシアに命じられたかって言うと。
 ……色黒のレゲエ兄ちゃんだった。
 
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 驚きだが、このレゲエもどきの色黒兄ちゃん、微妙にパンク系かつサイコ系なジェルドと兄弟らしいのだ。
 ちなみにレゲエもどきの方が兄貴だ。
 年齢は多分、三十歳前後じゃないだろうかと推測しているんだが、どうかな。
 異世界の人間の実年齢を当てるのは難しそうだ。実際の年齢よりも上に見えるのだ。
 というか、ガルシアの側近達って、他の船員達より比較的若い奴で構成されている気がする。見た目が、という意味だけれどさ。
 海賊達の外見年齢は、本当にばらばらだ。十代じゃないかって思う奴もいれば、どう見ても五十は越えてるよって奴もいる。
 海賊王であるガルシアなんて容姿だけで判断すれば、その若さはまだまだ下っ端に入るはずなのだ。いや、海賊はあくまで実力第一主義なのかもしれないが。
 ガルシアを取り巻く幹部的側近達は、大体六人くらいいるんだけれど、最年長者で四十歳前後って感じだった。海賊の生態(というのは失礼か……)を完璧に解明できているわけではないが、航海に乗り出す荒くれ者達を掌握し監理するには、ちょっと破格というくらいに若くないだろうか。仮に潜在能力が卓越しているとか指導者として的確な判断を下せるとかの才があったとしても、不測の事態にも対応して皆を統率できるほどの経験値などは少ない気がするのだが、どうなのだろう。こればかりは、才能よりも実体験の積み重ねで磨かれるものじゃないかな。しかし、ガルシアよりも更に若く見えるジェルドでさえ、他の船員達にはっきりと恐れられている。こいつなんて背丈はもう十分ってなほどあるけれど、せいぜい二十歳前後の若造にしか見えないぞ。いや、あまりにも凶暴で手が付けられず、勝てる奴がいないのか。そういえば、注意して観察すると、海賊幹部達と接する時の下っ端君達の態度は、相手によって微妙に違う。恐れの種類が異なるといえばいいのか。やっぱりRPGの法則通りには現実は進まないらしい。
 こいつの手綱を握って制御できるのは、きっと天下無敵な王様のガルシアと、兄弟のレゲエ兄ちゃんくらいなんだろうな。
 ジェルドの奴、はた迷惑なことに例の悲惨な夜以来、なぜか笹良をいたくお気に召したみたいで、ガルシアの目を盗んでは、色々とちょっかいを出してくるのだ。
 多分、それが原因で、笹良の臨時ボディガード役はレゲエ兄ちゃんに決定したのだろう。
 このレゲエ君の名前、ヴィーって言う。正確には、ヴィヴィローズというらしいのだが。
 女性っぽい名前だなどと冗談でも指摘すれば、刺し殺されそうな目で睨まれるだろうということは簡単に想像がつく。実際、幹部の一人がわざとヴィヴィとかって呼んだ時、いつ抹殺してやろうかっていう剣呑な眼差しに変わったし。ローズと呼ばれた時には、闇討ちを覚悟しろよっていう不穏な気配を漂わせていたし。
 まあ確かに、外見はばっちり男! なので、可愛い愛称で呼ばれたくはないという健気な信念、分からないでもない。
 ヴィーは、日本の空の下に生息するどこかのお兄様を彷彿とさせるくらい皮肉屋だけれど、意外や意外、割と面倒見がいいようだった。……奇妙奇天烈で野蛮な弟を持って苦労しているんだろうな。同情する。
 ま、それは置いといて。
 気が向くと、こちらの言葉とかを教えてくれたりする。もしかすると死神ロンちゃんの次あたりに、まともな人間かもしれない。あとの人間は、王様だったり、サイコを連想させたり、はげ頭だったり、筋肉馬鹿だったり、ひげもじゃだったりするしなあ。あぁ個性派揃いといえば聞こえはいいが、その実態は泣く子も黙る妖怪集団……じゃなくて、驚異のゲテモノ集団だ。いわば海底に蠢く不気味な姿の深海魚だ。たとえ過ぎか。
 ゾイとかグランとかは一応は正常な部類に入るのかもしれないけれど、何を考えているのか分からないところがある。美少年のカシカはやたらと憎悪を向けてきたし、などと笹良は虚ろな思いを抱いた。
 溜息どころか魂を吐き出してしまいそうなくらい、笹良は深々と項垂れた。
 
●●●●●
 
 ガルシアは今、他の船員に呼ばれて、海図室と呼ばれる所に行っていた。
 一方、笹良は日差しよけの役目を果たす簡易パラソル――といっても単純にマストの突起部分を利用して、布を頭上に掲げただけの素っ気ない代物だが――の下で、栄養と水分補給のために林檎をはぐはぐ齧っていた。
 この不格好な胡散臭いパラソル、実は、ヴィーが手早く作ってくれたものだった。太陽の光が強すぎて、笹良の肌にはちょっと辛かったのだ。なるべく影になる場所で丸まろうとする笹良の行動を、側にいたヴィーが敏感に察してくれて、意地悪い皮肉を漏らしつつもささっと日陰を作ってくれたのである。
 で、なんとなく笹良が貧血気味なのにも気づいてくれて、林檎を食べろと甲斐甲斐しく面倒を見てくれる。
 何か、精神的な疲れが作用しているのか、立っているとくらくら目眩がするほど身体が怠いのだ。慣れない場所に対して身体が始終、緊張し通しだったせいかもしれない。ここへきて一気に疲れが押し寄せたという感じだった。
「残さず食べろ」
 半分ほど残った林檎をさりげなく柱の影に隠そうとしたら、ヴィーに見つかってしまった。めざとい奴だ。
「でも、食欲ないんだよ」
 笹良は日本語で弱々しく反論した。演技ではなく、本当に少し気持ちが悪い。
 幸運なことに笹良は船酔いする体質ではなかったらしいが、船に乗っている限りは逃れられない海の香りと波の音に心底辟易していたので、既に満腹状態だったのだ。
「食べておけ。あとで倒れたくなければ」
 態度はとても冷淡なくせに、世話好きな男だ。
 蛇足だが、会話が成立してみえるのは、ガルシアに続いてヴィーにも、笹良がこっちの世界の言葉を理解しているのが、ばれてしまったためである。……かなりの確率でゾイやジェルドにも勘づかれているだろう。
 どうも笹良は感情がそのまま顔に出るらしく、日本語で応対していても何を伝えたいのか、大体のところを把握できるらしいのだ。
「ヴィー、笹良、もう食べられないよ」
 半分ほど残った林檎を泣きたい思いで持て余していると、ヴィーが軽く吐息を落とした。流れるような動作で身を屈めて、笹良の手から食べかけの林檎を奪い、口にしている。
「冥華、お前、本当に顔色が悪いな」
 ふとヴィーが手をとめて、眉をひそめた。
 む、仮病をつかっていると疑っていたな?
「冥華、違う、笹良」
 一応異世界語で反発してみたが、ヴィーはどこ吹く風といった感じだった。小憎らしい奴だ。
「少し眠るか」
 やだ。……という意見は、却下だろうな。
 もし笹良の身に何かあったら、気紛れ海賊王の凄まじいお仕置きが待っているしな。
 つまりさ、ヴィーがこんな風に細やかな心配りをしてくれるのって、自分の身に災難が降り掛かるのはご免だという理由がちゃんとあるためなのだ。
 笹良の体調を本心から案じてくれているわけじゃない。壮絶死の可能性大な二次災害を恐れているにすぎない。
 ああそうさ、人間というのは我が身が一番可愛い、利己的なものなのだよ。
 などと、厭世的な気分になった。
 まあ、変態ジェルドみたいな居心地の悪い好奇心を向けられるよりはましだ。ヴィーのように自分の感情よりも与えられたお仕事を優先させて、きっちり任務を全うしようとする方がよほど安心できる。それって、すごく冷静だということなのだ。
 ガルシアの命令が覆らない限り、ヴィーは笹良にひどい真似をしないだろうと思う。今のところは。
 別にいいさ、ビジネスライクで結構だともっ。
「立てるか」
 誰が立ってやるか。
 と、つい意固地になってしまうのは、頭では正しく理解しつつも、本当は納得し切れず傷ついている証拠なんだろう。
 うら若い乙女が、そこらに転がる物のように扱われているのだ。けれどただのモノではなく、いつ捨てられるか分からない王様の所有物。面倒だが無視もできないお荷物ってこと。自分が置かれている立場に、失望したくなる。笹良は感情最優先主義だし。理性的な考えって、我慢、忍耐とかの言葉がいつも根っこの所に隠されている気がしてしまうのだ。
 感情的な言葉は熱くて手に余り、理性的な言葉は冷たくて落としてしまう。どっちも手袋が必要だ。
 色々考えていると、ヴィーが露骨に迷惑そうな表情を浮かべて軽くこちらを睨んだ。
「仕方のないお姫さんだ」
 うるさい、笹良のどこがお姫さんだ。
 四六時中監視されているこの状態、殆ど囚人と変わらないじゃないか。あぁ言葉を満足に操れないって不便だな、心に描いた思いの半分も口に出せやしないのだ。
 無意識に、悪意をこめてじっと見つめてしまったらしい。
「おっと、呪いをかけるなよ」
 と、ヴィーは真顔で牽制した。
 こ、こいつ、笹良のことを邪悪な魔女かなんかだと思っているのか。
 くそ、黒ミサでもやってやろうかな。
 やり方知らないけど。
 笹良はぷいっと顔を背けた。
 すると、やれやれってなわざとらしい溜息が聞こえた。
「王に睨まれたくはないからな」
 と、零すと同時に、ヴィーが林檎をぽいっと捨てて、こっちに手を伸ばしてきた。
「ぎゃっ」
「騒ぐな喚くな落ちるな」
 冷たく突っ込まれてしまったが、断りもなくいきなり抱え上げられれば誰だって驚くし、騒ぐだろう。
 とりあえず丁寧な動作で抱き上げてくれたのは、勿論、笹良がガルシアのお気に入りだからである。いや、乱暴に荷物運びをされたかったわけではないけどさ。それはそれで不服だ。
 ヴィーはなぜか愕然とした目で、暴れる寸前の笹良を見た。
「冥華、お前、浮遊の術でも使っているのか」
「む?」
「何だ、この軽さ。見た目そのままに軟弱な重さだな。女だってもう少し量はあるだろうに」
 その、量、っていう非人間的な表現は、どういうことなのだ。
 繊細なハートを持つ笹良に対して物質的表現を使うんじゃない。燃やすぞっ。
 我が兄をもの凄く連想してしまうな、ヴィー。
「そっちが怪物並みにでかいだけじゃん、笹良は日本人の、同年齢の乙女達と変わらない身長体重なんだぞ!」
 ご立腹のあまり、ヴィーのやたらと編み込んでいるレゲエな感じの髪の束を一つ、ぐいっと引っ張った。金髪の編み込みって結構、迫力あるな。
 髪を引っ張られたヴィーは、苦い顔をした。ふふん、目下の奴にこんなことされたら報復として数発は殴っているだろうけれど、今の笹良はガルシアのおもちゃなのだ。壊せないだろう。
 と、自分で解説して思い切り脱力してしまうほど虚しくなった。笹良って玩具程度か。
 しかし、面白い髪の毛だ。
「これ、自分でしてるの?」
 小さな銀色の飾りで、髪の束をまとめている。
 ヴィーは無視した。
「すげえ時間かかりそうじゃん。所要時間どのくらい?」
 なにせ抱き上げられているので、ちょうど編み込みが目の前にあるのだ。気になる。
 ヴィーってこういう派手な髪型、好きじゃなさそうなのに意外だ。
「ねえってばさ。無視するのは男らしくないぞ」
 と言いかけて、日本語だったと気づく。
 船内で作業をしている船乗り君達は、ヴィーが通りかかると興味津々といった眼差しを密かに寄越してきた。まあ、笹良を運んでいるからな。
「ヴィー」
 くそ、異国語って英語並みに発音しづらいのだ。
「自分、髪、してる?」
 片言の外国人みたいだが、言いたいことは伝わったはずだ。答えないと、ヴィヴィちゃんて呼ぶぞ。
 ……もうっ、都合の悪い時は無視か。
 ふくれる間に、ヴィーはさっさと入り組んだ居住区域の方へ足を進めた。
 軽く暴れて反応を窺っても、全然こたえてない様子だ。おのれ。
 あ。
 そうだ。
 ひょっとして、今、チャンスじゃん。
「ヴィー」
 笹良は金髪の編み込みを引っ張った。
「グラン、……カシカ、身体、笹良、心配」
 単語の羅列だが、仕方ない。まだ言葉を覚えきれないのだ。
「心配、会いたいの、笹良、お願い」
 服の襟元を引っ張って、ヴィーの視線をこちらに向けた。何か答えなさい。
「お願い、駄目?」
「王の許可を得てないだろうが」
 つれないお返事!
「でも、でもっ、心配」
「王にまず、話せ」
「嫌っ」
 ガルシアには頼めないから、言っているのに。
 ちょうど今、ガルシアは用事があって、離れている。こういう時じゃないと、グラン達の所へ行けないじゃないか。
「グラン、身体、痛い、だから、笹良、怖い」
 ああ違う、うまく喋れない。
「俺に無理を通そうとするな」
 ヴィーの冷淡な態度に変化はなかった。
「意地悪じゃんっ。だって誰も教えてくれないもの、グラン、どうなったの? 死んでない? 笹良、マジでどうしようって思っているんだよ。すごく痛そうだったし、あんまり痛いと死んじゃうじゃん! でもガルシアに言ったら、またひどいことされるかもしれなくて、それで、ヴィーに頼んでいるのにっ」
 片言の異国語が焦れったくなって、笹良は口早に日本語で訴えた。
「死ぬのって怖いよ、笹良、そういうの嫌だ! ごめんねって言いたいのに、会えないじゃん。一回くらいお見舞い行かせてよ」
「得体の知れない言葉を耳元で喚くなよ」
「ヴィー、お願い、長い時間、ガルシアのもとを離れる時ってあんまりないもの、グランの所に行きたいよ」
「冥華、うるさい」
「男なら! 乙女の我が儘を許して叶えるべきだっ。そうじゃなきゃ、乙女は笑わないんだぞ!」
 通路の途中ですれ違った海賊君が、喚く笹良を何事かという目で振り向いている。
「言わせてもらうがな、お前が厄介な事態を招けば、俺に咎が降り掛かる」
 うっと笹良は息をつめた。その通り。
「そうなった場合は、冥華、お前は俺のために身を投げられるか? 今度こそは王も許さないかもな」
 思いっきり皮肉な顔で言われた。
 そうだ、まさにご指摘の通り。
 どこまでガルシアが寛大でいてくれるかなど、神のみぞ知るってものだ。
 けれどもさ。
「いいよ。その時は海に身投げでもして、ヴィーのこと助けてもらえるようにお願いするから! 約束する」
 ヴィーの手は笹良を支えているので、指切りの代わりに金髪の編み込みの一束を自分の小指に絡め、こくこく頷いた。
「分かる? 指切りじゃなくて、髪切り。……っていうと、髪切り魔とか通り魔みたいだけど」
 うわー日本語じゃ分からないか。
「ええっと、うん、助ける、ヴィー、笹良、守る。助ける。ね」
 よいしょ、とヴィーの顔をこっちに向けて、意思が伝わるように片言で繰り返す。
 ヴィーは立ち止まった。
 異質なものを見るような、呆れたような、驚いているような、そんな目をされた。
「ヴィー」
 男らしいはっきりした眉が、ちょっとひそめられている。
「とんでもねえお姫さんだ」
 ヴィーは呟いて、それでも方向転換してくれた。粘り勝ちというやつだ。

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