she&sea 27

 頑張れ、笹良。
 頑張れって言葉、時々重くて嫌い。だけど、負けるな、前を向くんだって気合いを入れた時、一番最初に、心に満ちる強い声はやっぱり、頑張れ、なのだ。
 使い方を間違えると、自分自身を攻撃してしまうことになる言葉。その重みに潰されてしまう時もあるけれど。逆風に狼狽えず、握った手にぎゅうっと力を入れて、胸に勇気を抱いて。
 さあ、負けるな笹良。
 
●●●●●
 
 ……なんて、なかなかシリアスに考えているとは想像してもいないだろう、お気楽極楽海賊王に抱きかかえられつつ、派手な娼船内に案内された。
 実に風変わりな船内構造だ。上部に緩やかな三角屋根の長屋みたいのがぽんと乗っている感じだった。そこの中には入らなかったので、内部が一体どんな造りをしているのか不明だが、とりあえず見た目はケバい。船長室や食堂とかがあるんだろうか。不思議に思ってガルシアに片言で訊ねると、操舵室などの諸室が揃っているという事だった。方位を測定する何たらかんたらとか、滑車装置がどうだとか推進機器があれやこれやと、時々専門用語を交えて詳しく説明してくれたけれど、笹良には小難しくて大半が理解不能だったため、右から左へスルー状態だった。船の総体積と比石の黄金率、風力による進行速度の相乗効果について講義されても困る。笹良は絶対、船乗りには向いていない。
 まあ、それはともかく。外観を眺めただけじゃ分からなかったけれど、実際、こうして船に降り立ってみると意外に頑丈な造りだと気づいた。船尾灯の辺りはぎょっとするくらいにやたらと装飾してあったけれどさ。
 上甲板の船首側にトイレらしき一画があるみたい。調理場とかはまた別の場所に作られているようだ。前部と後部に下層部へ続く昇降口が設けられている。笹良達は後部側の昇降口を利用した。海賊船の、足を踏み外しそうなほどぼろく小汚く古めかしい造りとは大違いで、泣けてくる。海賊船、全体的に黒いけれど……通路や仕切り壁なんて、シンボル的にダーク色で統一しているというより、長年の汚れが染み込んだせいで黒ずんでいるのではないかと実は疑っているのだ。目に見えて悪臭が立ちのぼりそうな汚さ。想像を絶する不衛生さをひしひしと感じずにはいられない毎日は、刺激を通り越して最早神の域に達しているに違いない。
 海賊達の中で「掃除」「洗濯」「清潔」という文字は、あらゆる言葉の一番下に押し潰され、可哀想に瀕死状態なのだ、絶対!
 一度彼らの頭を振ってやろうか、と笹良は娼船を眺めつつ、本気で策略を練った。が、きっと海賊の口から「さあ隅々まで掃除するぞー」という言葉が出てくる確率は、鶏くんが金の卵を産むのと同じくらい低いだろう。
 ガルシアやヴィーについては笹良が毎度視線で強く訴えているため、肩をすくめつつも割合着替えをしてくれるようになったが、他の海賊達ときたら一週間以上同じ服を平然と着続けているのだ。いや、それを当然と思っているのが恐ろしい。
 衛生面で一番評価できるのは、ゾイだ。あやつだけは笹良が小姑のように口煩く働きかけずとも、普段から身なりを小奇麗に保っている。許すぞ。
 ……うう、駄目だ。海賊船の汚さについて語るとどうしてもエキサイトしてしまう。
 笹良はニヒルな笑みを浮かべつつ、腕に抱き上げてくれているガルシアの顔を見た。すると視線に気がついたガルシアが、条件反射のように微笑を返してきた。これからも海賊達がどんどん清潔になるよう、きちんと調教しなくては!
 ……いけない、脱線してしまった話を戻そう。
 内心で色々と考えている内に、下甲板に到着したようだった。笹良はうろうろと視線を彷徨わせた。ここはどうやら居住区域になっているらしい。やたらときらびやかな仕切り代わりの布が垂れ下がっていて、微かに香水みたいないい匂いがした。女の人達がきっとこの区画に寝泊まりしているんだろう。
 基本的な構造は海賊船とそう大差ないのに、こっちの船の方が断然清潔な気がした。異臭があまりしないためだと気づいて、笹良は顔を引きつらせた。海賊達に是非見習ってほしい、清潔を保つという事が精神衛生上どれほど素晴らしいか。
 ガルシアとゾイは更に下層部へと降りていく。笹良は目的地はどこなのかと首を傾げた。海賊船でもそうだったけれど、下層部には色んな物の格納室や、食料などを保管する貯蔵室、倉庫、あとはよく分からん機関室や未知の部屋があるんじゃなかっただろうか?
 くねくねとした曲がり角の多い通路を奥へ奥へと進む内、何となく空気がよどみ、嫌な匂いが漂い始めた。人間の体臭が長い歳月をかけて、重く沈んだ感じ。
「こちらですよ」
 血が乾いたような色の扉の前で、笹良達を先導していたドルイが足を止めた。なんかもの凄く威圧的な印象を与える扉だった。暗く不穏な空気。上部の華々しさが嘘のようだ。
 ドルイはじゃらじゃらと鍵束を鳴らしながら、解錠した。取っ手部分に鍵状の義手の先端を引っ掛けて、扉を開ける。みしみしという変な音がして、笹良はかなり怯えた。ここに死神を立たせ、「地獄の入り口へようこそ」などと口上を述べさせたらきっと迫力満点の怖さだ、などとロンちゃんに失礼なことを考えつつ、ガルシアの首にはり付く。
 ガルシアは笹良を軽く抱え直したあと、宥めるように指先で背を叩いてくれた。うう、怨霊系の危険ゴーストが飛び出してきたら、まずゾイを盾にして、その間に逃走路を確保してほしい。
 ドルイは薄闇が満ちている船室に一歩踏み込み、内壁にかけられていたランプに火を灯した。それでようやく、室内の様子が見て取れた。
「ぎゃっ!」
 笹良は思わず叫んだ。
 だって、何これ!
「ガルシアっ」
「平気だ、ササラ。どれも足枷付きなのだから、襲ってはこぬよ」
 そういう問題じゃないぞ。
 笹良は呆然としつつ、まじまじと彼ら――囚われの人々を凝視した。
 奴隷。
 ガルシアはさっき、そう言っていた。
「ガルシア!」
「平気だと言っているだろう?」
 でも、この人達――表情や色彩が、ない。
 室内に何人いるだろうか。大雑把に数えて、二十二、三人か。この部屋は天井も低くて空間に広がりがない。不自由な狭い部屋にこれだけの人数が押し込められているというのに、なぜか中央の空間だけはぽっかり空いているのだ。一瞬奇妙に感じたが、簡単な理由だとすぐに理解した。皆、逃亡防止のため、壁に取り付けられた頑丈な鎖の足枷をはめられている。全員が身を縮めるようにして薄汚れた壁を背に座っているのは、鎖の長さが短いせいなのだ。
 精彩に欠けている、と笹良はもう一度思って、恐ろしくなった。何か、あたたかな魂が感じられない。
 そう思った原因は、囚われの彼らが、一切の衣服をまとっていないという事にある。
 全員、丸裸にされていたのだ。
 何だっけ。こういう話を聞いたことがある。拷問とかで相手を裸にするのって、劣等感や羞恥心を与えるのに一役買い、服従させる第一歩に繋がるのだとか。その心理はよく分かる。相手がちゃんと衣服をまとっているのに、自分だけ裸にされたら凄く恥ずかしいだろうし、辛くて惨めで、心が萎えるだろう。どんなに立派な大人だって、反骨精神や立ち向かう意志を挫かれるに違いない。
 服って単純に身体だけを包んでいるんじゃなく、きっと心も守っているのだ。
 笹良は今まで、可愛いとか奇麗とか、お洒落な面やお小遣いの事ばかりを重視して服を買っていたけれど、この世界は普段の生活では気づかなかった根本的な、厳しい「理由」を突きつけてくる。
 ガルシアはどうして、こんなむごい現実を笹良に見せようとするのだろう。
 支配するためなんだろうか。怯えさせて、言うことをきかせるため?
 ひどいよ、ガルシア。
 笹良は目を瞑り、顔をガルシアの首元にぎゅうっと押し付けた。
 ガルシアは身を屈めつつ部屋の中央にまで足を進めて、「ふうん」と面白そうな声を漏らした。
「使えそうなのが、数人はいるな」
「ええ、そうでしょうとも。どれもよく働く事でしょう」
 ドルイが追従の声を上げて笑った。
 ――嫌いだ、このじーちゃん!
「ゾイ、お前、一人を選べ」
 ガルシアの柔らかな声音。馬鹿!
「――そうですね、ではこの男を」
 見てられなかった。こんな風に、尊厳も何も無視し、物のように人間を品定めして、買うのだ。
「海上の王は、どれを選びなさるか?」
 ドルイの試すような口調がとても気に障る。
「そうさな。この男にするか。若いが、伸びるだろう」
「お目が高い」
 ドルイが深く感心し、ガルシアやゾイが選び出した男の頬に、何か墨みたいなしるしを付けていた。
「折角だからな――ササラ、お前も選んでよい」
 え?
「気に入った者はいるか?」
 耳を疑い、思わず顔を上げてガルシアを凝視した。
 笹良にまで、こんな――こんな非道な仕打ちの、共犯者になれと。
「そら、見定めな」
 愕然とする笹良を、ガルシアは床に降ろした。
 見定めるって。この人達を?
 選んだら、どうなる? 選ばれなかった者は、どうなる?
「ガルシア」
 できない。そう思って、必死にガルシアを見上げても、ただ微笑を返されて、頭を軽く撫でられるだけだった。
「どうした、ササラ」
「……王。冥華の目利きがあてになるとは全く思えませんがね」
 ゾイが静かにそんな事を口にした。他の状況であれば、よくも侮辱したな! とご立腹してゾイに喧嘩を売るところだが、今はむしろ無情な選択という重い責任を免除されるかもしれないと安堵を覚える。
「全くなぁ。つくづく思っていたのだがな、お前達はササラに甘い」
 ガルシアが楽しげに笑いながら、立ち尽くす笹良の髪に触れた。背後でゾイが溜息をつく気配を感じ、怖々と振り向くと、何ともいえない眼差しとぶつかった。
「王が誰より、寵愛しているでしょう」
「そうか。俺がな、一番甘いな」
 何の会話なのか。いつものようにふざけては返せない。この仕打ちを甘いというならば、世の中の全ては砂糖菓子で作られるだろう。
「ほら、ササラ。どれがよい? 労働に適している者を選んでみろ。己の目で、価値ある者を見出すのは愉快ではないか」
 価値って、他人が見出すものなのか。
 背を緩く押されて、笹良はふらふらとよろめきながら、枷に繋がれた奴隷達を見回した。皆、同じに見える。分からない。混乱して、涙で視界が歪んで、見分けなどつかない。
「うえっ……、ふぇ」
 嫌だと百回訴えても、ガルシアは許してくれない気がした。笹良はもう、混乱の許容範囲がオーバーしていたので、ろくに確認もせず一番近くにいた奴隷に近づき、ううっと泣いて訴えた。
「それにするのか?」
「うー」
 泣きながら頷いた瞬間、すぐ側で鎖が鋭く鳴った。
 ――ぎゃー!!
 突然、別の奴隷に服の裾を掴まれ、引きずり倒されそうになったのだ。
 んぎゃっと切迫した悲鳴が口から漏れた瞬間、空気が動いた。瞬き一回。その間に笹良はガルシアの腕の中にいて、ゾイが弓なりに反った短剣を奴隷の首に押しあてていた。
「ははっ、活きがよいのは結構だが、反抗的なのはいただけないな」
 ガルシアが笹良の肩に腕を回して、ゾイに押さえられている奴隷を見下ろした。
 奴隷は凄まじい目で、ガルシアを睨み上げている。白っぽい色をした髪の毛は、短くて不揃いだ。この人の目は、自分の境遇と不条理に対して、憎悪を訴えている。
「残念だが、お前は選んでおらぬのだなぁ」
 ガルシアは笑みを浮かべたまま、ゾイを一瞥して、斬れ、と言った。
「――嫌!」
 もう分かっている。ガルシアが斬れと一言命じれば、ゾイは従って、この人を本当に殺すのだ。
 それならば、笹良は。
 我が儘な冥華なのだと、ガルシアが許しているならば。
「駄目っ、駄目。笹良、選ぶ!」
 笹良はダッシュでその人に飛びつき、短剣を突きつけているゾイの腕をばしばしっと叩いた。
 ゾイが短剣を握り締めたまま、じっと笹良を見る。
「お前が選んだのはこちらの者だったろう?」
「んんっ、こっち! こっち、人」
 笹良は懸命に叫んで、不揃いな白い髪をした頭にしがみついた。どのくらいの期間、お風呂に入っていないのだろうか、すごくべたついていて、嫌な匂いを全身から発していた。
「ふうん。ではこちらはやめるのだな」
「駄目、そっちも!」
「おやおや、それは散財だ」
 もうこうなったら、ガルシアの言葉全てに反発してやるという心意気だった。
 笹良の腕の中で、白髪の奴隷が身動きしようとした。駄目だ。動いてはいけない。良い子だから大人しくしているのだ。
「うー、うー」
「この娘、唸っておりますぞ」
 ドルイがいささか驚きつつも、妙に感慨深げな声音で言った。
「仕方のない子だね。まあ、良い。お前の頼みなら聞いてやろうか」
 ガルシアの一声で、ゾイが剣をおさめた。
 うう、心臓に悪い。
 ほっとした時、微妙に唖然としている白髪の奴隷くんと目が合う。もうっ、あなたのせいで笹良は生きた心地がしないのだ!
「では、これで決まりな」
 ガルシアが宣言し、ドルイの方へ顔を向けた。
「恐れ入ります、海上の王」
 しめしめ、という感じの不気味な笑顔でドルイが義手をさすりつつ、何度も頷いた。悪徳商人め、いつか必ずどついてやる。
 しかし今は精神的に色々と打撃を受けているので、ひとまず撤退だ。
 笹良はぐったりしつつ、ガルシアの側へ行こうとした。
 ふと、部屋の角付近に座っている奴隷の一人と視線が交わった。
 緩いウェーブヘアをした人だ。何だか、救いを求めているような目をしていたので、笹良は戸惑った。
 その人はすぐに視線を逸らしてしまった。他の人達は、簡単に殺害する意志を覗かせたガルシアとゾイの雰囲気に飲まれて、戦慄した様子で顔を伏せていた。
「ササラ、おいで」
 扉へ足を向けかけたガルシアが、ちらりと笹良の方に視線を投げる。
「む」
「どうした」
 目が合った奴隷くんに、笹良はたかたかっと近づいた。
「む」
 この人も連れ帰る! という意味で、堂々と胸を張った。ゾイが一瞬目を見開き、次いで眉をひそめた。
 ガルシアが身体ごとこちらに向き直り、腕を組んで笹良を見下ろす。
「そんなに買ってどうする? もう必要はない」
 嫌だ。
 ついむかっとして睨み上げると、ガルシアは僅かに目を細め、腕を組んだまま、指先をとんとんと動かした。妙に威圧感を漂わせるポーズだが、ここで怯んでしまえば負ける。
「では、こちらの者は置き捨てるか?」
 ガルシアは不思議な色の目を、白髪の人へ向けた。
 駄目、と笹良は首を振った。
「ササラ」
 王様のくせに、けちくさいぞ!
「なぜ、お前はそう――困った子だね」
 ガルシアは笑った。気のせいじゃなければ、冷めた微笑だった。もしかしたら、ガルシアは苛立ったのか。
 困惑してゾイの方を窺うと、やはり何だか冷たい表情を返される。
 わけがわからない。何なのだ。
「そうか。先程までは嫌がっていたというに、随分選ぶ」
 嫌がる笹良を連れてきたのはガルシアではないか。張本人が何を言うのだ。
「使えぬ者を連れ帰ってもな、始末の手間が増えるだけさ」
 ガルシアが少し顔を寄せて、内心鼓動を早める笹良の顔を覗き込んだ。脅すとは卑怯だぞ。
「そら、これほど怯えて泣くくせに」
 ガルシアがからかうように笑って、指先で笹良の目に溜まっている涙を拭う。
「違う!」
「違わぬだろ。恐れている」
「涙、違う! 別!」
 この状況が恐ろしいから泣いているのではない! と言いたいのだ。
 いや、本当はご指摘の通りなのだが、それを言っては身も蓋もない。どうする、何て答えれば、この場を切り抜けられるのか。
「涙はっ」
 見透かしたようなガルシアの瞳に、対抗出来る言葉があるだろうか。
 海賊って、たちが悪い。
 笹良は非常に混乱していた。ええい、もう気の向くままに!
「笹良――乙女!」
「――」
 一拍の間を置いて、ゾイが、何? と呆気に取られた声を上げた。
「笹良、乙女っ」
 ガルシアの瞳が言葉の意味を咀嚼するように、ゆっくり瞬く。
 さすがの海賊王もこの場では予想していなかった言葉だったらしい。
「怖い、違う。涙、乙女! みんな……裸! 困る、服!……笹良は年頃の繊細で純粋な乙女なのだぞ! そんな笹良に、むさくるしい野郎共の裸って、どうなのだ。み、見たくないものまで次々と見ちゃったじゃないかっ。もうリアルすぎて大変ショック。トラウマになって悪夢とか見たら、ガルシアのせいだ。この年齢でこれだけの人数の裸を目撃してしまった笹良の気持ちも考えるべきだ、微妙に悲しくなって涙が出るのも当然!」
 叫んでいる内にふつふつと怒りが募り、ほぼ日本語で通してしまったが、身振り手振りも交えたので大体の意味はガルシアに伝えられただろう。
 息荒くガルシアやゾイを睨みつけた。どうだ、笹良の主張は間違っていまい。
 うまく言えない沈黙が流れた。
 ガルシアもゾイも目を見開いて、むっと顔をしかめている笹良を凝視している。
「……乙女、か?」
 ガルシアが、額を押さえて爆笑した。
「そう、そうだな。裸、ね。目のやり場に困ると言いたいのだな?」
 当たり前ではないか!
「刺激が強いか?」
 馬鹿! と絶叫し、笑い悶えるガルシアの膝をがしがしっと攻撃した。
 ゾイがやたらと疲労感を漂わせて、遠くへ視線を投げた。何だその、「虚しい」と言いたげな反応は。
「目の保養にならぬか」
 なるか馬鹿者。
「分かった、ああ、こら、噛み付こうとするな。お前の訴えに免じて、購ってやろう」
 うう、これを何と表現すればいいのか。瓢箪から駒、いや、何か違うな。漁夫の利……ぜ、絶対違う。
 笹良はぷいっと顔を背けたあと、まだ笑い転げているガルシアを押しのけて、部屋から脱出した。
 海賊なんかに乙女の複雑な心理が分かってたまるものか。
 たくさん裸を見たのは確かにショックだけれど、それだけで本当に泣くはずがない。
 涙の意味、勝手に勘違いしていればいいのだ。

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